目次
はじめに
よく「次の時間足の価格が上がるか下がるかの確率は50%であり、予測は不可能」と言われます。
本当にそうでしょうか?
そこで、実際に10年間のデータを収集して検証してみました。
データ取得用EAの仕様
指定した時間足(M1、M5、H1など)で、バーが確定するたびに価格の方向性を記録します。
新しいバーが形成されるたびに、1本前のバー終値と現在バー終値を比較し、上昇なら「UP」、下降なら「DOWN」、変化なしなら「FLAT」と判定します。
データ収集と取得結果
このEAを2014年1月から2024年12月までの10年間、1時間足で稼働させ、次の時間足の価格が上がるか下がるかを記録しました。
通貨ペア ドル円
時間足 1時間
ヒストリカルデータ Tick Data Suite(TDS)

| 方向 | 条件 |
|---|---|
| UP | 1つ前の1時間足のClose値 < 1時間足のClose値 |
| DOWN | 1つ前の1時間足のClose値 > 1時間足のClose値 |
| FLAT | 1つ前の1時間足のClose値 = 1時間足のClose値 |
取得したデータから、UP/DOWN/FLATの比率を計算しました。
UP/DOWN/FLAT比率の確認

※分析結果は、投資判断に使わないでください
UP、DOWN、FLATはほぼ均等に分布していました。
少し驚きですが、FLATも含め均等になっています。
これだけでは次の価格が予測できるかどうかは判断できません。
なぜなら、上昇トレンドや下降トレンドの局面が打ち消し合い、全体として均等に見える可能性があるからです。
UP、DOWN、FLATが連続しているケースの頻度
次に、UP、DOWN、FLATが連続しているケースの頻度について分析しました。
単純に50%の確率で上下するだけでは起こりにくい長い連続パターンは、過去の方向が次の方向に影響している可能性を示しています。
以下のグラフは、UP、DOWN、FLATの連続数を横軸、件数を縦軸にしたヒストグラムです。

※分析結果は、投資判断に使わないでください
上図で示すように5本連続することは稀であるとわかると思います。
ランダムウォークかどうか統計的に検証
ここで、UP、DOWN、FLATが5本以上連続する場合について、過去の時間足が未来の時間足に影響している可能性を考え、この頻度が偶然によるものかどうかを統計的に分析しました。
実データと同じサイズでUP、DOWN、FLATかが完全にランダムだった場合のシミュレーションを1万回実施したところ、5本以上連続する回数の95%信頼区間は 525 - 616 回 となりました。(パーセンタイルで算出)
※シミュレーションの信頼区間は、実データと同じ試行数の範囲内で、5本以上連続するUP、DOWN、FLAT件数がどのくらいの幅で出現するかの目安を示しています。
一方、実データでは5本以上連続した回数は 664回 でした(下図の赤い破線参照)。
信頼区間の上限値 616回 < 実データの664回
であることから、実データにおける5本以上連続した回数は非常に珍しい現象であると考えられます。
横軸は実データと同じサイズでシミュレーションした場合の5本以上連続件数、縦軸はその頻度を表しています。
赤色の破線は、実データでは5本以上連続した回数(664回) です。

※分析結果は、投資判断に使わないでください
95%信頼区間より上回っているため、完全なランダムウォークでは説明できないパターンが存在すると判断できます。
よくある誤解「価格が上がるか下がるか確率は50%」
よくある誤解として「価格があがるか下がるかの確率は50%だからテクニカル分析等は意味がない」というものがあります。
しかし、冒頭で説明した通り、実際に10年間※のサンプルデータを見た場合、UP、DOWN、FLATの比率はそれぞれおよそ3分の1となっています。
※2014年1月1日から2024年12月31日
つまり、確率的には33%ずつに均等化されているのです。
では、これで「テクニカル分析は意味がない」と結論づけられるでしょうか?
ここで一つの例えを挙げます。
コインが2枚あります。
1つ目のコインは表も裏も「A」と書かれています。
2つ目のコインは表も裏も「B」と書かれています。
この2枚のコインを交互に投げたとしましょう。
このとき、Aが出る確率、Bが出る確率は、ともに50%です。
しかし、偶数回のコインは必ずA、奇数回のコインは必ずBになります。
つまり「AかBか」を予測することは可能なのです。
重要なのは、AとBの出方には規則性があるにもかかわらず、それが打ち消しあった結果として、全体ではAとBの確率が50%ずつに見えてしまう点です。
UP、DOWN、FLATの比率が3分の1ずつになるという現象についても、これと同じことが言えます。
一見すると「均等なランダム」に見える現象でも、その背後には規則性や偏りが存在している可能性があり、そこにこそテクニカル分析の意義があるのです。
補足
本記事では、わかりやすい分析手法を使って説明しましたが、一般的にはLjung-Box検定で行うようです。
こちらで検定した結果でも同様に「完全なランダムウォークでは説明できない」結果となっています。
このことから、単なる偶然では説明できない傾向が存在することが裏付けられます。
※この結果はデータ上の傾向として示唆されるものであり、取引の成功を保証するものではありません
