目次
1. はじめに:短期・長期MAって何?トレンドを把握できるの?
FXのチャートでは、「短期移動平均線(MA)」や「長期移動平均線(MA)」という線をよく目にします。
短期MAは直近の値動きに敏感で、短期間の変化を素早く反映します。
一方、長期MAは長期間の平均値をもとにしているため、大きなトレンドの方向を把握するのに向いています。
多くのトレーダーは、「短期MAが上向きだから買う」「長期MAが下向きだから売る」といった直感的なルールでトレードすることがあります。
さらに、短期MAと長期MAの差を分析することで、よりトレンドを判断しやすくなります。
- 短期MAが長期MAを下から上に抜ける「ゴールデンクロス」は、上昇トレンドの可能性を示唆します。

- 短期MAが長期MAを上から下に抜ける「デッドクロス」は、下降トレンドの可能性を示唆します。

多くの人が『ゴールデンクロス』や『デッドクロス』で売買判断をしますが、本当に勝率は上がるのでしょうか?ただの思い込みかもしれません。
今回は、実際の10年分のドル円データを統計的に検証して、その真実を確かめました。
2. どんな方法で検証したの?
今回の分析では、次のデータを使いました。
データ
- 期間 10年間(2014年1月1日から2024年12月31日)
- 通貨ペア ドル円
- 時間足 1時間
- ヒストリカルデータ Tick Data Suite(TDS)
① データの分類
1時間足の終値の変化で、一つ前の時間足との価格の比較で次の3つに分類しました。
- UP(上昇)
- DOWN(下降)
- FLAT(ほぼ変わらない)
さらに、短期MA・長期MAの大小関係で以下の2つに分類しました。
- 長期MA<短期MA MA-UP
- 短期<長期MA MA-DOWN
※上記含めて以下、すべて短期MA=5、長期MA=20を使用
②一つ前の時間の価格のUP、DOWN、FLATの比率
10年間(2014年1月1日から2024年12月31日)のデータでUP、DOWN、FLATの比率を算出したところ、以下のようになりました。
UP、DOWN、FLATの比率はほぼ均等になりました。

③ 上昇、下降トレンドの判断の仕方
UP、DOWN、FLATが連続しているケースの頻度について分析しました。
以下のグラフは、UP、DOWN、FLATの連続数を横軸、件数を縦軸にしたヒストグラムです。

※分析結果は、投資判断に使わないでください
5本以上連続するケースはかなり少ないことが分かります。
そこで統計分析を簡単にするため、
UPまたはDOWNが5本以上連続する場合はトレンドが出ている可能性が高い
と便宜的に定義しました。
・長期MA<短期MAかつ上昇トレンドが出ている → UP(5本以上連続)かつMAーUP
・短期<長期MAかつ下降トレンドが出ている → DOWN(5本以上連続)かつMA-DOWN
上記の条件に該当する結果は、両方合わせて825件でした。
④ ランダムデータと比べてみる
比較対象のランダムデータの作成
同じ件数(825件)という試行の長さに合わせ、UP/DOWN/FLATが均等に出る完全ランダムのデータを作成し、その中で5本以上連続するUPまたはDOWNの件数をカウントしました。
これを1万回繰り返してシミュレーションしました。
その結果をヒストグラムにし、95%範囲(信頼区間)の上限値807件、下限値570件の緑線を加えました。
ランダムデータとの比較
※シミュレーションの信頼区間は、実データと同じ試行数(825件)の範囲内で、5本以上連続するUPまたはDOWN件数がどのくらいの幅で出現するかの目安を示しています。
実データにおける5本以上連続する825件は赤破線となります。

3. 検証結果
- 実データの5本以上連続件数(UPかつMA-UP / DOWNかつMA-DOWN):825件
- ランダムデータ1万回シミュレーションでの95%範囲:570~807件
シミュレーションでの95%の上限値807 < 実データの5本以上連続件数825件
実データでの5本以上連続件数は 825件 となり、ランダムデータ1万回シミュレーションによる95%信頼区間(570~807件)を上回りました。
このことから、短期MAと長期MAの差に基づくトレンド方向の把握は、完全なランダムよりも統計的に優位に現れる傾向がある と考えられます。
ただし、本検証はドル円・1時間足・短期MA=5/長期MA=20という条件に限定したものであり、他の通貨ペアや時間足でも同様の結果が得られるかは別途検証が必要です。
4. まとめ:MAは使える?使えない?
今回の検証では、短期MAと長期MAの差を使ってトレンドを判断した場合、ランダムでは説明できないほど連続方向性が強く出る傾向 が確認できました。
つまり、「MAはまったく役に立たない」という考えは正しくなく、一定の条件下ではトレンド把握に有効な指標となり得る ことが示唆されました。
ご自身のチャートでMAを重ねて確認してみると実感がわきやすいと思います。
ただし、結果は「ドル円・1時間足・MA5とMA20」という限定条件に基づくものです。異なる通貨ペアや時間足では異なる結果になる可能性もあるため、応用には慎重さが求められます。
