代表的なテクニカル指標であるMAとMACDのゴールデンクロス、デッドクロスが、なぜトレンド転換を検知できるのかを、メカニズムとイメージ図を用いてわかりやすく解説します。
私が作成したEA(自動売買プログラム)の多くにも、MAやMACDを組み込んでいます。
これらは裁量トレーダー・システムトレーダーを問わず広く活用されており、テクニカル指標の中でも特に知られた存在です。
一方で、MAやMACDのゴールデンクロス、デッドクロスについては多くの解説記事がありますが、その仕組みを図解しながら説明している記事は多くありません。
本記事では、こうしたメカニズムを視覚的に理解することを目的としています。
参考文献
アペル流テクニカル売買のコツMACD開発者が明かす勝利の方程式 (ウィザードブックシリーズ) ジェラルド・アペル著
MACDは、ジェラルド・アペルにより、考案されました。上記の書籍は、バイブルと言える専門書です。
MAとは
MAは、移動平均線(Moving Average)のことです。
MAは、ある期間の価格の平均値をずらしながら数珠繋ぎした線です。
このある期間のことを「MAの平均期間」と呼びます。
MAの目的は、チャートのランダムな価格変動(ノイズ)の値動きを低減させてチャートの価格変動をなめらかにすることで相場の方向性を明確にすることです。
以下の図で価格変動のチャートは、黄色の線となります。
平均期間を5とした場合の平均値を数珠繋ぎしたものが青線となります。
ランダムな価格変動(ノイズ)の値動きが低減しているのがわかると思います。

目的は「相場の方向性を明確にすること」と書きましたが、注意する点として、MAが示した相場の方向性は、必ずしも長期間続くわけではなく、相場環境によってはすぐに反転することもあります。
どのくらい「相場の方向性」が継続するのかは、このMAだけで判断できません。
図で示したように特にトレンド転換相場には弱く、実際のトレンド転換から少し遅れます。
黄色のチャートは、実際の価格変動です。
青色のチャートは、MAです。


より直近の価格の変動の影響を大きくする方法として、EMA(指数平滑移動平均線)があります。
直近の価格変動の重みを強くします。これと区別するため、先程、説明したMAのことをSMA(単純移動平均線)と呼びます。
MAの弱点であるトレンド転換は、次のEMAのゴールデンクロス、デッドクロスで改善されます。
EMAのゴールデンクロス、デッドクロス
MAの山の頂上、つまり勾配が水平になったところでは、既にトレンドが転換した後になるため、タイミングが遅いです。
もっと早く検知する方法について説明します。
まず「平均期間」が異なる2本のEMAを用意します。
トレンド(相場の方向性)が出ている場合、2本のEMAはともに上昇、下降を示していますが、EMAの山が勾配がなだらかになってくると「平均期間」が短期間が長期間に比べて早く反応し、勾配が先になだらかになるという性質があります。
ここで短期間は12とし、長期間は26と仮に設定します。
それぞれ12EMA、26EMAとします。
この場合、
12EMA - 26EMA
は上昇トレンドが強くなるとプラス方向に大きくなります。
下降トレンドが強くなるとマイナス方向に大きくなります。


上昇、下降トレンドの勢いが弱まると12EMA - 26EMAの差は小さくなります。

12EMA - 26EMAがマイナスから0になった場合、トレンドが下降から上昇に転じたシグナルとなります。これをゴールデンクロスと言います。
逆に12EMA - 26EMAがプラスから0になった場合は、トレンドが上昇から下降に転じたシグナルとなります。これをデッドクロスと言います。

ゴールデンクロス、デッドクロスは、「MAについて」で説明したEMAの山の頂上(26EMAの頂上)、つまり勾配が水平になる点よりも、早く検出できます。
これは、短期EMAが価格変動をより早く反映し、長期EMAよりも先に勾配が変化するためです。
であれば、短期のEMAだけで判断すればいいのではないか思うかもしれません。
なぜ短期EMAだけではダメか
ノイズの影響が大きい
短期EMAは直近の価格変動に敏感に反応します。
そのため、本格的なトレンド転換でなくても一時的な調整などで勾配が変わってしまいます。
→ トレンドが続いているのに「転換シグナル」と誤認しやすい傾向があります。
トレンドの強弱を判断できない
短期EMAだけだと、変化が「小さな調整」なのか「本格的な転換」なのか区別しにくいです。
長期EMAと比較することで、大きな流れ(長期トレンド)に対して短期トレンドがどう動いているかがわかります。
ただし、EMAのゴールデンクロス、デッドクロスだけでトレンド転換点を判断するのは、危険かもしれません。トレンド転換の寿命が長いかどうかはわからないため、他のテクニカル指標で補強する必要があります。

MACDのゴールデンクロス、デッドクロス
EMAよりも更に早くトレンドの転換点を検出する方法として考案されたのが、MACD(移動平均収束拡散手法)のゴールデンクロス、デッドクロスです。
短期EMA(通常12期間)−長期EMA(通常26期間)=MACDと定義します。
このMACDはトレンドの強さを表します。

もう一本、ラインとしてMACDのEMA(指数平滑移動平均値)を準備します。
通常、平均期間は、9に設定します。
これをシグナルと言います。


上昇トレンドの場合、MACDはプラスの値をとります。
上昇トレンドが弱まるとMACDの値は、0に近づきます。
0になる箇所は、MAのところで説明したEMAのデッドクロスと同じです。
トレンドが弱まるとシグナルよりも、MACDの方が先に反応し、勾配が緩やかになります。
車に例えると次のようになります。
MACDは「現在の加速度」のようなものです。
シグナルは「過去数秒の平均加速度」のようなものです。
今の加速度(MACD)が平均加速度(シグナル)より大きければ、車は加速中であり、逆に小さければ減速中と見ることができます。

MACDとシグナルがクロスする箇所がトレンド変換点となります。
これは、EMAのデッドクロスよりも早く検知します。
ただ、「MAについて」と同様にMACDのゴールデンクロス、デッドクロスもトレンド転換の寿命は長いかどうかはわからないためです。



まとめ
| 指標 | 概要 | 特徴・用途 |
|---|---|---|
| MA(移動平均線 / SMA) | チャートのランダムな価格変動(ノイズ)を低減し、相場の方向性をなめらかに示す | 特徴:価格のノイズを平滑化し、大局的なトレンドを把握できる。反応は遅く、トレンド転換は後追いになりやすい 用途:トレンドの方向性 |
| EMA(指数平滑移動平均線) | SMAよりも早く価格変化を反映する | 特徴:短期の価格変化に敏感 用途:トレンドの方向性 |
| EMAのゴールデンクロス / デッドクロス | 短期EMAと長期EMAが交差する点 | 特徴:EMAと比べてトレンド転換を早く検出可能 用途:トレンド転換 |
| MACD(およびMACDのゴールデンクロス / デッドクロス) | MACD = 短期EMA−長期EMAとシグナル=MACDの9期間EMAが交差する点 | 特徴:EMAのゴールデンクロス / デッドクロスと比べて早くトレンド転換を早く検出可能 用途:トレンド転換 |
